家庭学習Q&A

はじめに

 「どのように、家で勉強させたらいいのですか?」「家庭での学習って、復習中心でいいのですよね?」「宿題するのが精一杯で、高学年になるのにいいのかしら?」「せっかく机を買ってあげたのに、机で勉強する姿をみたことがないわ。机で勉強しなくていいの?」など個別懇談の場などで、保護者の皆様から、ため息まじりにいろいろとご質問をいただきます。
 これは、家に帰ってからなかなか宿題をしなかったり、家庭学習の習慣がついていなかったりする姿から、子どもの学習意欲の低下や家庭学習時間の減少という最近の調査と重なり、「うちの子、今のままで大丈夫?上の学年や学校に進んでもついていけるのかしら。」という、保護者の皆様の心配の表れと受け止めています。

 子どもの学力については、学校が責任をもつべきことで、極めて教員の指導力にかかっていることを私たちは厳しく自覚しています。そこで、本年度は、教員研修で算数の授業力のアップに取り組み、子どもたちにとって楽しくて力のつく授業へと改善を進めています。また、書く力・考える力を鍛えるため、ノート学習・プリント学習にも力を入れています。
 保護者の皆様には、本校の教育活動のあらましや力を入れて取り組んでいることについては「学校教育ビジョンや学校だより」で、なるべく詳しくお知らせするようにしています。また、一人ひとりのお子さんの学習の到達度や様子については、学期ごとに「通知表」をもとにして直接お話しするなどの機会を持つようにしています。もう少し細かく、日々のお子さんの学習への取組の様子については、ノートやワークシート、テストやプリント、作品などから、おおよそは把握していただいているものと考えています。 

 しかし、学校での学ぶ力を支えると共に、もっと大きな意味で、大人になっても自ら学んでいくための『根っこ』、これを、よりしっかりとしたものにするには、小学校時代に学校と家庭が力を合わせて、「家庭での学習習慣をつけるとともに、子どもの学びに対して興味や関心を広げること」が、極めて大切であると考えています。
 このようなことから、『内部小学校 家庭学習Q&A』を試みに作ってみました。

 家庭での学習については、学校を離れて帰宅後の生活のなかでのことなので、それぞれのご家庭の様子や考え方によっても違いが大きく、一つの答えでまとめることができないのが事実です。また、「うちの子は、こういう子どもになってほしいので、こういう考え方・方法をとっている」という具体的な方針で進めていただいている家庭もおありでしょう。ただ、家庭学習は、学校での学習活動と関連している場合が多いので、「こんなときは、どう考えたらいいのだろう。」と迷われることもあろうかと思われましたので、Q&A形式で作成しました。
 お読みいただき、参考になれば、一つでも二つでもそれぞれのご家庭に応じて、お試しいただければ幸いです。

質問(こんな姿はありませんか?)
Q1 家庭学習は、いつさせればいいですか?
学校から帰ると、すぐお友達のうちに遊びに行ってしまいます。
・帰宅後、習い事があるので、家庭での学習は その後になってしまいます。
・スポーツ少年団での活動から帰ると、疲れた様子で、しばらく休養が必要みたいです。


Q2 家庭学習は、どこでさせればいいですか?
・せっかく自分の学習机があるのに、全然使おうとしません。
・自分の部屋ではなく、家族がいる場所でしたがります。
・居間のテーブル(または、食卓)に 学習の道具を広げています。
 

Q3 家庭学習は、どんな環境で、させればいいですか?
・家が手狭で、居間のテーブルで、テレビを見ながら、やっています。
・きょうだいで子ども部屋をいっしょに使っています。上の子が家庭学習を始める頃には、下の子がゲームをしています。
・静かなクラッシック音楽を流しながらさせると、効果があがると聞いたことがありますが・・・。


Q4 家庭学習は、どれくらいの時間すればいいのですか?
・「宿題できた!」といって、あっという間に終わってしまい、見るチャンスがあまりありません。
・机の前にはずっと座っているようですが、作業はいっこうに進みません。1時間も2時間も だらだらと続けています。分からないのでしょうか?
・少しでも長い時間してほしいと思っていますが、やればやるほどいいのでしょうか?


Q5 家庭学習で、何をさせればいいですか?
・学校の宿題以外しようとしません。
・市販のドリルをいっぱいさせたいのですが、どんなのがいいのでしょう?


Q6 学校からは、どんな宿題が出されていますか?
・保護者が帰宅する頃には宿題が一応し終わっているようで、「もうしてある」と言って見せようとしません。見せるとやり直しをさせられると思っているみたいです。

丸のついていないプリントを何枚ももって帰りますが、本人にたずねても学校でしたものなのか、宿題だったものなのかはっきりしません。
宿題は毎日ありますか?きちんとしていって、提出しているのかどうか把握できません。
低学年のときは、音読を聞いていましたが、大きくなったら声を出して読んでいるのを見かけなくなりました。

Q7 昔とはやり方が違うように思いますが、手伝ってもいいのですか?
・宿題を早くやるようにと促すと、いつもすぐに「わからない、できない」と言います。教科書などを見ながら説明しようとしても 答えだけを聞きたがります。
・学校でいっぱいまちがえていたような問題を、家で親といっしょにして、全部合っていたら先生がどう思われるか気になります。
・音読は自分一人でやっているようです。大きくなっても聞いてみたいのですが。


Q8 子どもの学習に対する興味・関心を広げるのには、どうしたらいいのでしょうか? 

・漢字や計算はするのですが、それ以外は自分からはしようとしません。
・子どもが習いたいと言ったので、ほとんど毎日いろいろの習い事に通わせています。


Q9 保護者にとって、家庭学習で大切なことはなんですか?



こう考えています。
Q1 家庭学習は、いつさせればいいですか?
A1 帰宅後の生活のスケジュールは 各家庭によってちがいます。
それぞれのご家庭で「自分のうちでは、どの時間帯にするのが一番適切か」をまずよく話し合っていただき、決めたら、ご家族全員で守るための努力をしていただくとよいかと思います。
特に小学生1・2年では、おうちの方が、お子さんがどんな学習をしているのか楽しんで見ていただくといいかと思います。隣に座って、ずっと宿題を見なければならないということではありません。台所に立って食事の準備をしている間に、ちょっと見ていただくというのもいいかなと思います。

Q2 家庭学習は、どこでさせればいいですか?
A2 無理に、学習机や自分の部屋で、ひとりでさせる必要はないと思われます。
家族の人の目の届くところで家庭学習をするのは、子どもたちにとって、よいことが多いのです。もし、内容について、困ることがあったら、相談することができます。ちょっと自信がないときも、見てもらえることで、まちがいはすぐその場で直して正しく理解できるし、できていれば、安心して、もっとがんばろうという気持ちになれます。また、見える場所でしていると、おうちの方にとっては学校での学習の中味を知る機会となります。大切なのは、場所ではなく、「場の環境」なのではないでしょうか。

Q3 家庭学習は、どんな環境で、させればいいですか?
A3 家庭学習をしている間、[集中できる環境]であることを大切にしていただけるといいなあと思っております。
できれば、その間は、家族の他のメンバーもいっしょに静かに何かに取り組んでいただける方向でご協力をいただけると素敵ですね。

Q4 家庭学習は、どれくらいの時間すればいいのですか?
A4 個人によってもちろん違いはありますが、小学生の「集中力」が続き、家庭学習として効果があるのは、その学年の数字×(かける)10分から15分程度といわれています。

例えば、4年生なら、(10分×4=で)40分程度、集中して学習に取り組めることをめやすにしていただくとよいかと思います.。
参考までに、 学習時間のめやすは、  1年生 20分
                         2年生 30分
                         3年生 40分
                         4年生 40分
                         5年生 50分
                         6年生 60分 ぐらいでしょうか。

Q5 家庭学習で、何をさせればいいですか?
A5 まず学級で宿題として出されるものをていねいにしてほしいですね。
さらに学校の学習をしっかり定着させるため、市販のドリルなどで同じようなものを繰り返し反復することで力がつきます。その場合、どれが家での自分の学習にあっているかをお子さんもいっしょに相談しながら選ぶ機会があると、より積極的に取り組めるかと思います。また、学校での学習の様子を子どもとの話題にしていただき、習ってきたこと・覚えてきたこと・できるようになったことを、子どもから詳しく教えてもらうという形をとってもいいですね。

Q6 学校からは、どんな宿題が出されていますか?
A6 子どもの学年に応じて、復習から調べ学習・自主学習まであります。
・「音読」はすべての学年で宿題として出されています。他に、主なものとしては、漢字・ひらがな、カタカナの練習・・・プリントで、又は、漢字ドリルをノートに。計算練習・・・プリントで、又は、計算ドリルをノートに。九九カードや計算カード。日記や作文。社会科・理科・総合などの調べ学習やプリントなどです。さらに、高学年では、「自由勉強・自主学習」として、各自が計画的に進めるものや「授業の課題の続き」も宿題として出されることがあります。
・宿題の内容や量の大枠は、学校全体、学年で話し合って決めていますが、各学級の学習の状況や子どもの様子が異なりますので、担任が各学級に応じて宿題を出します。

Q7 昔とはやり方が違うように思いますが、手伝ってもいいのですか?
Q7 まずは、相談にのってあげてください。それから、自分から取り組むよう仕向けていただければと思います。
・宿題を前にして、「わからない、できない」といったときは、本当にわからない、できないのではなく、早く終わってしまいたいという気持ちから言っている場合もあります。すぐに答えを教えるのではなく、どこがわからないのか、何ができないのか、まず相談にのってあげていただくのがよいかと思います。もし本当にわからなくて困っているようなら、明日、先生に聞くようにすすめてください。

・調べ学習などで困っている場合、時間があるときは辞書、事典・地図・地球儀・インターネット等ご家庭にあるもので、いっしょに調べ、いっしょに学習する姿勢を見せていただければありがたいです。こうしたことで自分で勉強する態度が身につき、勉強の面白さが分かってくるのではないでしょうか。

・たとえば、「音読」は学年に関わらず機会を作ってぜひ聞いてあげてほしいですね。低学年では、すらすら読めるようになってきたら、「会話や間をあけるところ」に気をつけるように、中学年では、「気持ちをこめて」読めるように、また、高学年では、「句読点や速さ」に気をつけて読み、慣れてきたら「情景や人物の気持ちを想像して」読めることをめあてとしています。上手に読めたり雰囲気が出せていたらほめてやってください。「音読」はすべての学習の基礎であり、子どもの「記憶力」を高める効用があると言われていますので、暗唱までいくとすばらしいですね。

Q8 子どもの学習に対する興味・関心を広げるのには、どうしたらいいのでしょうか?
A8 「おもしろい」「もっと知りたい」という知的好奇心を大切にしたいですね。
・自分から今習っていることに関心を持って進んで学んでいけばこんなにすばらしいことはありません。そのためには、体験も大事です。感動したり、不思議だと思ったりする気持ち、それを掘り下げる探究心も原動力になります。そのためには、「家族でいっしょに知的な活動」が楽しめる機会を作っていただいてはどうでしょうか。時には、 図書館や博物館・美術館・史跡などに親子で出かけるのはどうでしょう。子どもだから分からないということはありませんし、また、自分たちが暮らす地域をより深く知るために、親子で近所を散歩してみていただくのはどうでしょう。いろいろな発見があり、今まで気づかなかったことにも目が向くようになります。学習雑誌・新聞・テレビ番組などから、いっしょの話題で会話ができるといいですね。
・「親子で何かを発見し、語り合う」それを繰り返すことで子どもは好奇心を深めます。「おもしろい」「もっと知りたい」という好奇心が学力の土台になるのですから、勉強と結びつけようとして一方的に押し付けるのではなく、「知る楽しさ」を学校とはまた違う家庭らしい方法で子どもたちに示していただけるとよいと思います。

・好きなことに打ち込んでいるとき、子どもは生き生きとしています。しかし、興味の対象が次々に移っていきますので、同時にいくつものことを好きになるのは、まれなことです。個人差もありますが、習い事の回数が多すぎると、子どもは心身ともに疲れてしまうでしょう。あまりにも習い事をしすぎると自主性が育たなくなることもあるようです。何人もの専門的な指導者からいつも指示されて動いている場面が多すぎるとかえって自らの意志で動くことができない子になってしまうことがあるかもしれないと思われます。本当に好きなことに打ち込んでいける姿が見られるといいですね。

Q9 保護者にとって、家庭学習で大切なことはなんですか?
A9
 勉強しているかを見張るのではなく、「見守る」気持ちで、『子どもたちの学習に関心をもつこと』や『学習環境を整えること』、また、『担任(学校)と連絡を取り合うこと』などを考えてもらったらいかがでしょうか。分からないところは、無理に家庭でしなくても、次の日、担任に聞けばよいということもご家庭で伝えてあげていただきたいと思います。

算数を例にとって、「家庭学習で大切なこと」を考えてみましょう。

長さや距離、重さといった単位、時計の見方は、いずれも生活に必要だから覚えるものです。勉強と生活を切り離して考えることはできません。
   
時計の見方をどう教えたらいいのかというとき、日常生活で時間を意識して暮らしているかどうかが問題になってくるでしょう。普段、時間に無頓着な毎日を送っているのに、学校の勉強で必要になるからと急に時計の見方を教え込もうとしても子どもは戸惑うばかりです。どこにいても時間がわかるように家の中に時計を置き、会話の中にも頻繁に時計の見方を織り込んで、時間というものを生活の中で意識させることが大切でしょう。学力を支えているのは、「生活環境」であり、豊かな「生活体験」ではないでしょうか。子どもに無理なく、楽しく、生活のなかで体験を通して考えていけるといいですね。

・小さい学年のお子さんをおもちなら、なんといっても子どもと一緒に楽しんで学ぶ気持ちが大切かと思います。子どもは、教科書を見ていても、いろいろと発見したり心を動かしたりします。そういうことを、子どもと一緒に楽しんだり考えたりすることを中学年ぐらいまですると子どもは、自然と学習に関心や意欲を持つようになります。学習に関心や意欲をもつようになった子どもは。高学年になっても学習することが苦痛でなく、自然と家庭学習に向かうようになります。


終わりに
 このようにQ&Aを考えてみて、子どもに確かな学力をつけるには、子どもの生活を、学校と家庭とわけるのではなく、トータルなものと考えて、両者が力を合わせて進めていくものだと、特に次の二つのことに強く思い当たりました。

 その一つに、学習の連続性を考える場合、家庭と学校をつなぐものに、宿題と明日の準備・用意があります。
 ところが、宿題や明日の学校での学習に必要な用意(教科書、ノートなどをはじめ準備物や用具)や提出物の忘れ物が少なくありません。学習の用意を忘れたら、自分が勉強できないばかりでなく、場合によっては友だちに迷惑をかけたり、学級の学習の進度にも影響してくることもあります。
 多くの子どもは、自分できちんと準備をし、また、低学年ではおうちの方も気をつけて見ていただけるようですが、2年生の半ばを過ぎると、忘れ物をする子どもが増え、3年生になると目立って多くなってきます。おうちの方に、忘れ物が多いことをお知らせし、注意をしていただくようにお願いもしていますが、中学年ではなかなか改善が見られないこともあります。家庭での学習準備がきちんとできることと学力との相関関係があることは調査で明らかとなっています。低学年では、おうちの方の協力がありうまく滑り出したのに、もう大丈夫だろうと少し目を離した中学年でつまずいてしまうというのは、大変残念なことです。
 そこで、宿題をする時間だけはきちんと決めることと、家庭学習の終わりに、おたよりを見て、明日の学習の用意などがきちんと準備できているかを確かめる習慣をつけることをお願いします。また、子どもが自分では最後まできちんとできないような場合には、おうちの方が特別に目配りをしていただくよう、お願いします。

 その二つに、家庭での読書を、子どもの一日の生活に是非位置付けていただければと思いました。
 読書をする子どもは、おのずと読解力がつき、学力が伸びていきます。
 学校でも、本好きな子どもとなるよう、教員がいろいろな方法で子どもを本に誘ったり、ボランティアの方に教室で絵本の読み聞かせや楽しい本の紹介をしていただいています。また、PTAで特別にお金をいただいて本を購入してもらっています。
 特に、低学年に限らず、ちょっとした時間や寝る前に、絵本や本の読み聞かせの時間をとっていただければと思います。子どもが「本を読んで」とせがむうちは、「もう大きくなったから自分で読みなさい。」と言わずに、読んであげていただくようお願いします。また、家族で一緒に読書をする時間や、図書館で本を借りたり本屋さんで本を探すなどの時間が持てれば、素晴らしいことです。

 
 どうか、お子さんが小学校のうちに、本をたくさん読んであげてください。そして、本のページを開く楽しみをプレゼントしていただければと思います。




参考文献:陰山英男著『学力は家庭で伸びる』