活発な読書活動
港中学校は平成26年度から平成28年度の3年に渡り、四日市市の読書活動推進校の指定を受けました。これを機に、よりいっそう読書活動を充実させるためのとりくみを進めてきました。これからも豊かな心の育成、言語活動の充実、仲間づくりを目標に読書活動を充実させていきます。

↑ 図書館司書によるブックトーク(写真左)と担任による読み聞かせ活動(写真右)


↑ ブックバイキング(写真左)とPC室との連携利用(メディアセンターとしての活用・写真右)

【参考】四日市市子どもの読書活動推進計画
 

読書活動

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2015/07/14

本の紹介(3年生のコーナーより)

| by 港中HP管理者

各学年の国語の教科書には、学期末の部分に読書紹介がありますが、3年生の授業もここにさしかかり、今日は分野別に何冊かの本を紹介するとともに「歴史」ジャンルの小説をオープンスペースに置きました。このジャンルで教科書のトップに紹介されているのが司馬遼太郎の「竜馬がゆく」です。司馬遼太郎については、この紹介だけでなく、教科書巻末の付録の部分に「史記」と「項羽と劉邦」という文章が載っており、この中で司馬作品の魅力が紹介されています。今日の授業では、この巻末を読み、司馬作品の魅力に触れた後で、幕末を舞台にした「竜馬がゆく」「世に棲む日々」「燃えよ剣」などを簡単に紹介しました。その中で分量的にも内容的にも最も読みやすいと思われる「燃えよ剣」について、ここで触れてみたいと思います。



この作品は「竜馬がゆく」と同じく司馬遼太郎さんの作品で、主人公は新撰組副長の土方歳三です。彼が書いた幕末ものは、他にも長州藩の吉田松陰と高杉晋作を描いた「世に棲む日々」や同じく長州藩の村田蔵六(大村益次郎)を描いた「花神」、長岡藩を舞台にした「峠」などがありますが、僕はこの「燃えよ剣」を勧めます。

幕末維新史はかなり複雑難解ですが、「竜馬がゆく」で坂本龍馬を語るためには土佐藩の成り立ちや武士階級の身分制度に始まり、薩長同盟を成し遂げた人物であるだけに薩摩藩や長州藩の思想や藩論の変遷にも紙面を割かざるを得ないわけで、いきおい説明的な内容が多くなります。これは「世に棲む日々」でも同様であり、物語の背景を正確に理解するためにはかなりの歴史的知識を要します。幕末維新史への興味はもう一つ湧かなくて、「物語そのもの」を純粋に楽しみたいと思う人には、これらの作品より「燃えよ剣」の方がいいでしょう。と言うのも、この作品で描かれる土方歳三には強い思想はなく、ただひたすら新撰組という組織を強くし、一度決めた「幕府を守る」という信条をかたくなまでに守り抜いていくという、言わばシンプルでわかりやすい生き方をしているので、誰でも物語そのものに没頭できると思うからです。

前編では多摩の薬売りであった土方歳三が、天然理心流の仲間とともに上京し、新撰組を興し、その組織を作り上げていきます。司馬さんという人は、読者がいつのまにか主人公に惚れてしまうような「悪魔的筆致」を使う人ですが、小気味よく展開していくストーリーにいつしか時間を忘れ、気がつけば前編を読み終わり、新撰組が結成されています。

一方、後半は「滅び」への急展開。大政奉還。鳥羽伏見の戦い。江戸への退却。宇都宮。会津。そして榎本艦隊と共に北海道へ。どんどん死んでいく仲間と佐幕勢力の劣勢。こうした中、最後まで「一つの生き方」を貫くことこそが美学であると戦い抜く歳三はますます生き生きと描かれます。そして函館の街が落ちるその日、五稜郭の閣僚たちは降伏を決めるが一人、歳三は敵陣へ。

文庫本にして2冊、「竜馬がゆく」の4分の1くらいで長さも手頃。煩雑な歴史知識が必要なく、流れるようなストーリーに没頭できます。また、恋愛的要素も入っていて、そういう面でも心を打ちます。ぜひ読んでみて下さい。「竜馬がゆく」を読んだ人も、いわば対極の立場にあった佐幕派新撰組の副長にスポットを当てたこの小説を読んでみると、また新しい世界が広がるでしょう。ちなみにこの「燃えよ剣」は昭和30年代に連続ドラマになってしまっていて、その後は部分的にしかドラマ化されていません。

09:19 | 学級・学年文庫拝見